導入事例

  • モノづくりを支える

粒子法流体解析ソフトウェア「Particleworks」導入事例
株式会社いすゞ中央研究所 様

「想定」から「科学的根拠」へ
摩耗・潤滑状態を把握し、サーキュラーエコノミーに向けた部品寿命の確かな予測
株式会社いすゞ中央研究所
研究第一部 部長
山下 健一 氏
いすゞ中央研究所(神奈川県藤沢市)は、いすゞ自動車株式会社の完全子会社として、商用車分野における中長期的な技術開発や基盤研究を担っている。100年に一度といわれる自動車産業の変革期において、内燃機関の高度化や電動化への対応、カーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーに資する技術開発を進めている。将来を見据えた取り組みを実現するために、同社が活用するのが構造計画研究所(KKE)の粒子法流体解析ソフトウェア「Particleworks」だ。

「見えにくい」現象に向き合う基盤研究の現場で

まず、山下さんが所属する研究第一部では、どのような研究を行っているのかご紹介ください。

私が管掌する研究第一部では、エンジンの潤滑や摩擦、摩耗、振動、騒音といったトライボロジー分野を中心とした基盤技術を研究しています。これらは燃費性能や耐久性に直結する重要な要素ですが、外からは見えにくく、研究者の経験や勘に頼ってきた部分も多い領域です。

そうした研究の中で、Particleworksを導入された背景と、導入にあたって重視された点を教えてください。

従来は試作機を製作し、実機試験を重ねながら検討を進めてきましたが、エンジン内部のオイルジェットのように高速で飛散する流体の挙動は可視化が難しく、評価には多くの時間とコストがかかっていました。設計条件を変更するたびに試作や試験をやり直す必要があり、検討できるケース数にも限界がありました。また、空間を飛散するオイルの挙動については、従来の解析手法では十分に再現できず、ある程度は想定で進めざるを得ない場面もありました。こうした課題を解決する手段として、Particleworksに着目しました。

導入にあたっては、実験結果と整合する解析が得られるかを最も重視しました。そこで、導入前にKKEへ解析を委託し、オイル挙動や、ピストン内のオイル穴への捕捉状況が実機と定性的に一致することが確認できました。この委託業務の結果が導入の決め手となりました。また、粒子法であるためメッシュ作成が不要なことに加えて、パラメータの設計条件もモデルが用意されているため、若手研究者でも設定が容易で、複数の仮説を従来に比べ短時間で検証できるようになりました。

▲図1:クーリングチャンネルのオイル捕捉

将来を見据えた解析のためにParticleworksを活用

EVの普及が進むと見られていますが、研究所の役割に変化はあるのでしょうか。

EV化が進んでも、商用車の分野では内燃機関がすぐになくなるとは考えていません。長距離輸送や重量物輸送といった用途を考えると、内燃機関は当面使われ続けると見ていますし、燃料が変わってもエンジンそのものが果たす役割は残ります。また、仮に動力源がモーターに置き換わったとしても、ギヤや軸受、冷却といった機械要素は必要で、そこには潤滑や摩耗といった課題が必ず生じます。そうした意味では、トライボロジーを中心とした基盤技術の重要性がなくなることはありません。

いすゞグループは、2030年に「商用モビリティソリューションカンパニー」への変革を目指す中期計画「ISUZU Transformation(IX)」を掲げています。この中では、自動運転やコネクテッドサービス、カーボンニュートラルソリューションといった将来価値の創出を重視しており、既存事業の強化と新たなソリューション提供を両輪で進めています。そのために、将来どのような技術が必要になるのかを見極め、提案し、必要な基盤を整えておくことが中央研究所の大きな役割だと考えています。

そうした将来を見据えた役割の中で、すでに具体的に進めている取り組みはあるのでしょうか。また、Particleworksはどのように活用できるとお考えですか。

サーキュラーエコノミーの観点からは、部品の再利用や長寿命化を前提とした技術検討を進めています。商用車はもともと耐久性が求められる製品ですが、今後は単に長く使うだけでなく、「どうすれば再利用できるか」「どの状態まで使えるのか」といったことを、技術的に説明できる必要があります。そのために、摩耗や潤滑状態をきちんと把握し、部品の状態を予測する研究にも取り組んでいます。

ただ、数万台レベルの実機にセンサーを取り付けて評価できれば理想ですが現実的ではありません。その点、Particleworksを使うことで、さまざまな条件を想定しながら検討を進めることができるだけでなく、実機では見えない部分についても仮説を立てて検証できるため、部品の使われ方や負荷のかかり方を考えるうえでの情報が得られます。こうした解析結果は、将来の設計指針や技術検討の土台として活用しています。

また、燃料が変われば燃焼特性だけでなく、エンジン内部の温度分布や潤滑条件も変わってきます。その影響を事前に把握しておくことは、今後の技術検討において重要です。Particleworksは、そうした条件変化に伴う挙動がどう変わるのかを確認する手段の一つになり得ます。

将来の技術動向が見通しにくい中で、研究を進めるうえではどのような点を重視されていますか。また、Particleworksをどのように位置付けていますか。

サーキュラーエコノミーや燃料の多様化などを含め、自動車の将来像について何が正解なのかすでに分かっているわけではありません。何をやればよいのか、どこから手を付けるべきか分からない部分も多いというのが実感です。だからこそ、想定される技術や考え方を幅広く検討していくことが重要だと考えています。その点で、Particleworksは、将来に向けて「何を考えるべきか」を整理するための材料を与えてくれるきっかけになります。

また、研究を進めるうえでは、特定の人の知見に頼りすぎない体制を作ることも大切だと感じています。比較的若手でも扱いやすいツールがあることで、仮説・検証のプロセスを組織として共有しやすくなると考えています。

▲図2:オイルジェット噴流可視化結果(左:シミュレーション、右:実測)

研究開発のコア業務に特化するためにもツールを積極活用

Particleworksの導入は、研究所の人材育成などの点ではどのような意味を持っているとお考えですか。

研究者の採用や育成が簡単ではない中で、限られた人員でどこに時間を使うべきかという点は、常に意識しています。中央研究所としては、試作や評価作業そのものを回すことよりも、将来に向けて何を考えるべきか、どの技術に取り組むべきかを整理し、提案していくことが重要な役割だと考えています。

その意味で、Particleworksのようなツールがあることで、検討の初期段階を効率的に進めやすくなり、研究者が将来に向けた技術課題の整理や仮説検討、技術的な方向性を考えるといった、本来担うべき業務に時間を割きやすくなります。Particleworksに限らず、すべてをツールで置き換えるわけではありませんが、今後も研究の中身や進め方を見極めながら、必要なものについては積極的に取り入れていきたいと思います。

最後に、Particleworksを提供するKKEに対して、どのように期待していますか。

Particleworksは、トライボロジーの研究において欠かせない高機能なツールですが、そのポテンシャルを最大限に引き出すためには活用ノウハウも重要になります。KKEは導入から実際の運用まで、当社の課題や考え方を深く汲み取ったきめ細かなサポートを提供してくれており、非常に心強く感じています。

また、期待はシミュレーションに留まりません。物流最適化や交通流予測、非破壊検査技術など、KKEの幅広い知見は、燃費向上だけでなく「物流全体の変革」を目指す当社にとって非常に心強いものです。将来を見据えた取り組みを進める上で、今後も欠かせないパートナーとして伴走し続けてほしいと考えています。

取材日:2026年1月

株式会社いすゞ中央研究所について
■創業    :1990 年
■本社所在地 :神奈川県藤沢市
■ホームページ:https://www.iaec.isuzu.co.jp/

この事例に関するお問い合わせ

株式会社構造計画研究所 Particleworks 担当
TEL:03-5342-1053
E-mail:sbdseminar@kke.co.jp
Web:https://www.sbd.jp/products/flow/particleworks.html

※記載されている会社名、製品名などの固有名詞は、各社の商標又は登録商標です。
※記載されている会社名、製品名などの固有名詞は、各社の商標又は登録商標です。