導入事例

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地震対策コンサルティング 導入事例
東リ株式会社 様

「多数の拠点の中で、優先して対策すべき建物を定量的に評価し、より重要度の高い施設を絞り込み、計画的に地震対策を完遂しました。工場の稼働状況や費用も考慮した上で、スムーズにプロジェクトを進め、自社の事業継続性の向上に寄与することができました」
東リ株式会社 総務部 総務グループ グループリーダー 満倉研一氏(右)、総務部 総務グループ 参事 戸島修氏(左)
床材やカーペット、カーテン等、インテリア資材の総合メーカーである東リ株式会社。100年以上の歴史を誇り、伊丹事業所では7万㎡の広い敷地面積に60棟以上の建物を有している。それだけに近い将来発生が予想される大地震を憂慮し、その対策として構造計画研究所(KKE)に地震対策コンサルティングを依頼。特に古くて危険性の高い工場の耐震補強を実施した。依頼から実施に至った経緯や地震対策コンサルティングのメリット、今後の展望などについて、東リが保有する建物等を管理している総務部 総務グループ グループリーダーの満倉研一氏と総務グループ参事の戸島修氏に語っていただいた。

どこから手を付けていいのかわからなかった

まず、弊社に「地震対策コンサルティング」をご依頼いただいた経緯や抱えていた課題についてお聞かせください。

当社は創業1919年と歴史が長く、兵庫県伊丹市の事業所には7万㎡の敷地内に約60棟もの建物があります。全国の支社を含めるとさらに多数の建物が存在し中には古い施設もたくさんあります。それだけに近い将来懸念されている南海トラフ巨大地震が実際に発生した時、多くの工場は揺れに耐えられず、事業が継続できなくなるのではないかと以前から憂慮していました。
しかしながら私たちのようなメーカーの場合は工場が古くなったからといって製造ラインを止めることはできず、簡単に建て直すことができません。対処法としては古い工場をコツコツ修繕しながら操業するほかありませんが、それにも限界があります。また、これだけ建物が多いと本当にどの建物が危なくてどこから手を付ければいいのか、私たちには見当もつきません。これが会社として長年抱えていた課題でした。
2011年頃、巨大地震に備えて、BCP(Business Continuity Plan/事業継続計画)について本格的に調査・検討を始めました。その過程で、構造計画研究所(KKE)のBCPセミナーに参加。その時に、KKEの担当者からBCPの一環として「地震対策コンサルティング」を紹介いただき有効だと感じました。
KKEであれば最新の専門技術を駆使して最適なBCP施策を提案してくれそうだと感じたことに加え、実際の提案内容と当社のニーズがマッチしたことから、2015年2月プロジェクトがスタートしました。

通常、地震対策は多大な費用がかかるということもあり、経営層を説得するのが難しい場合が多いですがその辺りはいかがだったのでしょうか?

満倉 研一氏

経営層は当然、構造や地震のメカニズムについての技術的な知識は有していないので、実際に大地震が来た時に、どの工場がどう揺れて、どのような被害を受けるのかという全体像を把握してもらうのが大変でした。しかし、KKEは図面だけではなく、独自のシミュレーションソフトを使って視覚的にわかりやすく解説してくれましたので、経営層に対して非常に説得力がありました。そのおかげで社内の稟議もスムーズに通ったわけです。

最適な補強方法の提案から耐震補強完了まで

その後はどのようにプロジェクトを進めていったのですか?

まずは全体像を把握するため、「地震対策優先度評価」を実施していただきました。伊丹事業所の全60棟の建物調査を行い、施設内の従業員数や竣工年、構造、劣化状況などをふまえ、施設ごとに定量的に分析し、補強工事を施すべき建物の優先度を決定しました。
その次に行ったのが「地震時の建物挙動評価」。重要拠点工場をコンピュータ上で忠実に再現し、想定する地震波と震源と地盤から、重要拠点工場がどの程度揺れて壊れるかを3Dアニメーションを用いてシミュレーションしていただきました。これにより、私たちも経営層も想定される被害が容易に理解できましたし、早く対策しなければという危機感を持つことができました。

▲シミュレーションの様子

この結果を受けて、まずは伊丹事業所のメイン工場を含めた3棟の工場の耐震補強工事を行うことになり、工場のラインとの干渉を極力減らし、外側からのエネルギー吸収機構をもつ部材(アンボンドブレース)などを使い補強する設計案を提示していただきました。
工事の設計監理もKKEのエンジニアに担当していただき、何度も現場に足を運んで設計通りに施工が進んでいるかの確認やトラブル対応をしていただきました。そのおかげで、伊丹事業所のメイン工場の工事は2020年11月に無事終了。
さらには、厚木事業所の工場も2021年4月から耐震補強工事をスタート。2021年9月に無事完了しました。
このように、2015年から約6年かけて様々な会社・人と協力、調整して1つの大規模なプロジェクトを成功させ、会社のBCPに大きく貢献したことが評価され、社内でも表彰を受けました。名誉ある賞ですし、そもそも私たち間接部門は評価を受けること自体あまりないので、とてもうれしかったですね。

▲補強設計後の工場外壁

トラブルにも迅速に根気強く対応

KKEに依頼して具体的によかったと感じた点は?

戸島 修氏

特に苦労したのが工事のフェーズだったのですが、終始当社の立場に立ってゼネコンと接していただけたので助かりました。最も大変だったのは伊丹事業所のメイン工場の耐震補強工事です。工場を稼働させながらの工事となるので、例えばKKEのエンジニアが補強に最適だと判断した場所でも、工場外壁には配管設備などがあり部材を設置できないというケースが多々ありました。
そこで工場側の意向を汲み取りつつ、何度もシミュレーションを繰り返して設置場所を提案していただきました。本当に地道な作業でしたが、根気強く対応していただき、技術的にとても信頼できると感じました。

現場で小さなトラブルが発生した際も、その度KKEのエンジニアに電話やメールで問い合わせをし、迅速かつ正確に対応していただきました。おかげさまで、スケジュールに遅延が生じることなく工期通りに完成させることができて大変助かりました。また、直接の工事とは関係のない課題や疑問にも相談に乗っていただいたのも嬉しかったですね。

今後の展望やKKEに期待することを教えてください

今回は危険度の高かった伊丹事業所の3棟の工場と、厚木事業所の1棟の工場の地震対策工事を優先的に行いましたが、対策はすべての事業所に必要です。もちろん時間とともに建物も劣化しますし、新しい断層が見つかれば地震被害のリスクも増加します。今回地震対策を実施した4つの工場ですらこれで終わりではなく、継続して手を加えなければなりません。
KKEは柔軟な発想で構造設計の分野にとどまらず、ITなどの技術を活用し新しい分野にチャレンジしていますよね。そこで得られた最新の知見は益々重要になると思うので、今後も様々な情報を提供していただきたいです。
社内会議でもBCPについての議論を継続しているので、今後も相談することも増えるでしょう。末永くお付き合いいただきたいですね。


東リ株式会社について
創業:1919年  
本社所在地:兵庫県伊丹市
ホームページ:https://www.toli.co.jp/

取材日:2021年10月

この事例に関するお問い合わせ

エンジニアリング営業2部
TEL:03-5342-1136
E-mail:bcp@kke.co.jp
Web:https://www.bcp-kke.jp/

※記載されている会社名、製品名などの固有名詞は、各社の商標又は登録商標です。
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