展示レポート
多様な視点による ヒューマンセントリックな空間デザイン
建築の設計に対する要求が多岐にわたる昨今、より多様な軸を考慮した空間デザインが求められています。ここでは、初期設計段階にシミュレーション技術を活用することで、人を中心とした空間設計を実現する新しい設計プロセスの在り方をご紹介します。
「人による人のための最適な空間設計」を実現するために。建物の基本設計段階でプランニングとシミュレーションを繰り返すことで、空間デザインの可能性を広げます。
取り組む社会課題
建築の設計(デザイン)は、⼯業製品とは異なり全てが⼀品⽣産のオーダーメイドであるとともに、最近ではSDGsの⾼まりもあり、コスト・安全性だけでなく環境への配慮、労働環境の改善など、多くの課題を解決していかなければならなくなっています。このような現状の中、デジタル技術が⾶躍し、建築設計の⾼度化が進んだことで、ここ数年でようやくBIM(Building Information Modeling)が浸透してきました。コンピュータ上の仮想空間に3次元の建物情報モデルを構築することで、⾼度な合意形成、各種シミュレーションソフトとの連携による定量評価、施⼯シミュレーションによる設計ミスの抑制などが実現しています。 ⼀⽅で、空間デザインについては、設計が進んだ実施設計段階での大きな変更は難しく、建築のコンセプトを形作る基本設計段階での検討が必要になります。さらに、ステークホルダーによって観点やプライオリティが異なる、コスト・安全性・快適性などの条件を含んだ、「⼈を中⼼とした」空間デザインを実現させるためには、コンピュータが最適解を⽰すのではなく、デザインとシミュレーションを繰り返し、ステークホルダーが最善解を求めることが重要だと考えています。この基本設計段階にてデジタル技術を活用しシミュレーションを実施することで、空間デザインを効率化し可能性の幅を広げることにつながるのではないかと考えました。
「解」へのアプローチ
プランニング&デザイン
BIMによるデジタル建築情報と、KKEの保有する建築・環境関連シミュレーションを組み合わせたWebベースのプランニングツール上で「空間」「モノ」を直感的にプランニングします。
3Dモデル化
プランニングした平⾯図を3D化します。シミュレーションするエリアを断⾯にすることもできます。
シミュレーション&解析
3次元の仮想空間上で、構造計画研究所の各種シミュレータを実⾏します
プランニングとシミュレーション&繰り返す
絞り込み
多様な視点を考慮した空間評価をスピーディに絞り込み、意思決定を⽀援します。
【参考】操作デモ動画
関連ソリューション
以下のコンセプトと組み合わせることで、設計者から見た定量的な空間評価だけでなく、「利用者の視点」という定性的な評価を取り入れた、より効果的な設計手法につなげることを目指しています。
利⽤者視点の⽀援
利⽤シーンと評価をもとに、空間のつかい⼿とつくり⼿でコミュニケーションをとることで、齟齬のない共通認識を得られ、隠れたニーズの抽出や新たな設計⼿法につながることを⽬指す
活⽤例
❶建築企画設計での利⽤想定シミュレーションや利⽤⽅法の共有に
❷住宅営業での住まい⼿のニーズの引き出しや齟齬の解消に
つかい手の想定や要望をつくり手側で入力し計算処理
・3次元の空間イメージとして、理想に近いシーンを提示
・設計初期段階で、つかい手とつくり手のイメージすり合わせを可能に
活用例
①基本設計段階におけるコンセプト検討
建物のコンセプト・⾻格を決める基本設計段階において、安全性や経済性といった観点だけではなく、利用者の快適性、有事の際の避難安全性など、多様な観点によるシミュレーションを数多く試⾏錯誤できることで、建築空間設計の可能性の幅を広げ、設計(⼈)の意思決定を⽀援することができるソリューションを実現できます。
②⼤学(教育)・若⼿設計者に対する建築設計シミュレーションコンテンツ
この間取りを変更すると、どのようなことが起きるのか。安全性、経済性、快適性などにどのような影響を及ぼすのか。経験の浅い技術者や学生の方でもそうした点を容易にイメージでき、利用者の知見を深める教育コンテンツの一つとして活用できます。
今後の展望
本構想を実現するプロトタイプとして、弊社事務所の執務フロアを対象とし、「コミュニケーション活性化」を目的としたデスクレイアウトの検討に適用しました。多くのプランを多角的な視点から評価し、特徴を見える化することで、議論が活発化し、最終的なレイアウトの決定に有効でした。本取り組みは1つの試行に過ぎませんが、「最適な結果」ではなく、多角的な視点から空間やモノを評価しながら人の「意思決定」を支援することが、今後も求められていくのではないかと考えます。
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