展示レポート
ワイヤレス通信をデザインする
ーサイバー空間に構築されるワイヤレス通信の振る舞いー
私たちはこれまで、アンテナから電波がどのように放射されるかを評価できる電磁界シミュレーション、電波が端末までどのように届くかを評価できる電波伝搬シミュレーション、その電波に乗せてどのようにデータがやり取りされるかを評価できるネットワークシミュレーションの技術を個別に提供してきました。
これらの技術を統合することにより、ワイヤレス通信を丸ごとシミュレーションできるようになる未来が近づいています。
毎日の生活に欠かせない存在であるワイヤレス通信。サイバー空間上で通信の振る舞いを再現すれば自由で先進的なアイデアの実現性や性能を評価できるようになります。
取り組む社会課題
近年のワイヤレス通信システムは高速大容量化、低遅延化、同時多数接続化が進み、ますます複雑化しています。そのため、システムの評価・検証に多大な労力とコストがかかることが構築の上での課題となっています。
また、使用する周波数がどんどん高くなる傾向にあり、電波が届く距離が短くなったり、反射や遮蔽の影響を受けやすくなったりしています。電波が届く距離が短くなると広いエリアをカバーするためには多数の基地局を設置しなければならず、効率的な置局が求められます。また、反射や遮蔽の影響を受けやすくなると、実際に電波が届く範囲を推定することが難しくなり、サービス開始後のトラブルが発生しやすくなります。
さらに、高い周波数の電波は形状や材質の電気特性のわずかな違いで性能が変化するためデバイス開発が難しく、その結果部品や測定器が高価なため試作や実験を容易に繰り返すことはできません。
そこで、ワイヤレス通信システムをサイバー空間上に構築することによって、これらの課題を解決しようとする取り組みが始まっています。
「解」へのアプローチ
ワイヤレス通信システムをサイバー空間上に構築するためには、私たちがこれまで提供してきた各種シミュレーション技術やモデル化技術が活用できます。
アンテナからの電波の放射や反射板の性能などを再現するには電磁界シミュレーション技術を、反射や遮蔽が起こりえる環境で電波がどのように到達するかを再現するには電波伝搬シミュレーション技術を、電波に乗せて届けられるデータのやり取りを再現するにはネットワークシミュレーション技術を利用します。
1. 3Dモデルの生成
レーザースキャナで計測した点群データから、電波伝搬シミュレーションで利用可能な3Dモデルを生成します。
2. デバイス開発
アンテナの形状や材質などを変えることによって、性能がどのように変化するのかを周辺環境を含めた電磁界シミュレーションで評価します。
3. エリア設計
基地局の位置や送信パワーなどを変えることによって、電波のカバーエリアや伝搬特性がどう変化するのかを電波伝搬シミュレータで再現し、エリア設計における試行錯誤を支援します。
4. ネットワーク設計
データ伝送プロトコル開発において、端末数が極端に増減した場合などに通信品質がどのように変化するのかを再現します。
活用例
①通信品質まで考慮した基地局設計
どの位置に基地局を配置すれば通信品質を最大化できるかを検討しながらの置局設計が可能になります。
②通信品質まで考慮した製品開発
サイバー空間内にアンテナや反射板など試作した製品を配置することで、通信品質をどれくらい改善させられるかを検証することができます。
③各種トラブルシューティング
サイバー空間に実際のワイヤレス通信を再現し、様々な観点からどこに問題があるのか原因究明をサポートすることができます。
今後の展望
電波の広がり方、電波の伝わり方、データの伝わり方といった目に見えない部分をサイバー空間上で再現しシステム設計や構築の試行錯誤を行えるようにすることで、今後も皆さんが意識せず安心してワイヤレス通信を使えるよう取り組んでいきたいと思います。
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