導入事例

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評定対応コンサルティング導入事例
株式会社国建 様

「評定物件に関するノウハウを社内で確立することができ、安全性や居住性がさらに向上した設計を提供できるようになりました」
株式会社国建 構造設計部
(前列 左から) 安里 涼氏、竹本 京治氏
(後列 左から) 上江洲 靖氏、宮城 純子氏、部長 島袋 敦氏、砂川 秀紀氏
美ら海水族館、首里城、ブセナテラスリゾートホテルなど、沖縄県で多くの大型プロジェクトを手がける株式会社国建。沖縄初の免震構造建築の設計をきっかけに、構造計画研究所から評定対応に関する技術支援を受けている。プロジェクトの経緯と沖縄における免震技術の有用性について伺った。

沖縄の大規模プロジェクトの多くは国建が担当

株式会社国建について教えてください

1960年の創立で、数年前に創業50周年を迎えた総合建築コンサルティング企業です。建築をメインに、土木、調査、都市計画をする部門などがあります。技術士が7名、一級建築士が40名、構造設計一級建築士が5名います。

国建の代表的なプロジェクトとして、美ら海水族館、首里城、ブセナテラスリゾートホテル、万国津梁館や沖縄コンベンションセンターなどが挙げられます。他にも、沖縄県南部医療センターや宮古島空港ターミナルビル、伊計大橋、石垣第2発電所や伊佐浜下水処理場などがあります。

構造設計部の役割はどういったものでしょうか

沖縄で初めての女性構造設計
一級建築士、宮城 純子氏

建築設計部がデザインした建築物の構造設計を担当しています。私たち構造設計部のメンバーは11名で、地方自治体の庁舎や学校などの公共施設をはじめ、オフィスビル、ホテル、商業施設、住宅、さらには病院、工場などの特殊施設に至るまで、さまざまな建築を手掛けています。

意匠の図面を元に構造計画をして構造設計図を描くのですが、当社の強みの一つとして、社内の建築設計の担当者とすぐに意思疎通を図れる点が挙げられます。通常はデザインが決まってから梁や柱の太さを決めるのですが、複雑なデザインの場合は構想の段階から参加し、構造設計の意見を主張することもあります。

構造設計には安全性をデザインするという大事な役割がありますので、人の命をあずかっているという意識を常に持って仕事をしています。



沖縄初の免震マンションの評定対応支援を構造計画研究所に依頼

構造計画研究所を知ったきっかけはなんですか

もともと構造計画研究所はこの業界で有名なのでお名前を知っていました。島袋があるプロジェクトで東京の設計事務所に出向していた2003年に、そちらの方を通じて技師長の高橋さんとお会いしたのが最初の出会いでした。

それからしばらくして評定(※1)物件があったので、すぐに高橋さんに連絡をして技術支援をお願いしました。2006年のことです。

沖縄初の免震マンション、フレスコア旭橋
入り口脇の看板で免震構造を説明

どういった評定物件だったのでしょうか

国建独自で評定物件を取り扱った初めての物件で、フレスコア旭橋という住居ビルです。18階建ての鉄筋コンクリート造で、高減衰ゴムの免震装置を採用しました。それまでは、告示のルート(※2)で免震設計を行ったことはあったのですが、評定物件というのは初めてでしたので、構造計画研究所に振動解析の詳細な手法・評価のポイントや、評定の際に提出する膨大な書類のまとめ方などのノウハウを一から教えていただきました。

自分としても実際に手を動かして、書類を作成したり解析手順を覚えたりしたかったので、自分で行った解析や作成した書類を構造計画研究所にチェックしていただきました。解析にはRESPシリーズのF3、M/Ⅱ、QDM、それからBIRD(※3)など多種の構造検証用のソフトを用いて、地震波の入力や計算条件、結果の評価を修得しました。

この物件は沖縄県で初めて免震構造を採用したマンションなんです。地震の揺れを免震装置で吸収し、地震の揺れを建物に直接伝えないように抑える構造になっており、ゴムの層を通して揺れが小さく伝わるような機能と、早く揺れを低減できる機能の両機能を兼ねた高減衰積層ゴムを採用しています。これらの機能により、躯体そのものだけでなく、室内の損傷などの被害を防ぐことが可能です。

※1 評定
国土交通大臣指定の性能評価機関において、建築基準法に基づき、専門家による性能評価の審査を受けること。超高層建築物や免震建築物のように高度な構造手法を用いた建築物や、新開発の材料等が対象となる。

※2 告示ルート
免震構造の建築物等を設計する際に用いる構造計算の手法の一つで、平成12年の建設省告示第2009号に基づいて構造計算を行う方法のこと。

※3 RESPシリーズ、BIRD
構造計画研究所が提供する構造解析ソフトウェア。各ソフトウェアを組み合わせて運用することで、構造物の耐震検討を行うことができる。詳細HP:http://www4.kke.co.jp/resp/product/resp/index.html

テナントとしても安全性と快適性が確保されているビルということで安心して住めますね

「RESPの結果は他社と共通
言語的に使え、助かってます」
安里 涼氏

はい、まさにそういった点を重視して設計しています。

他にも、那覇市の桜坂に建設予定のホテルも国建が設計をしたのですが、こちらには弊社で初めて高強度コンクリートを採用しました。高強度コンクリートは、文字通り強度の高いコンクリートで、超高層や大空間の建築に適しています。このホテルも、完成すれば沖縄の設計事務所としては初めて高強度コンクリートを採用した建物になるんですよ。

この時にも、RESPやBIRDなどのソフトを構造計画研究所からレンタルし、社内で振動に対する検討を十分に行った上で評定に臨みました。この解析はどういったアプローチを用いて、どこがポイントになるか、社内の経験者や構造計画研究所に知見を仰ぎながらプロジェクトを進めました。

 

振動解析にRESP以外のソフトを使われたことはありますか?

特に他のソフトと比較検討したりはしていません。他の設計事務所やメーカーもほとんどRESPを使っていますので、RESPの計算結果を共通言語的に用いて話をすることができます。



免震構造の優位性〜地震や風に対し安全性と居住性を確保〜

今年竣工した那覇市新庁舎も国建で担当されたそうですが

はい。元の市庁舎が老朽化し、かつ手狭になったため新たな庁舎を建てられたのですが、コンペの際に条件として耐震安全性が優れていることが挙げられており、弊社としては免震構造を提案しました。大きな空間を作りたいという意図で、プレキャスト梁を採用しています。また、亜熱帯沖縄ならではの植物を多用し、壁面緑化やパーゴラをふんだんに配置した、緑あふれる建物になっています。加えて、南国沖縄ならではの強い風や日差しを遮るためのルーバー(※4)も多用した設計になっています。

2013年1月に竣工した那覇市新庁舎

2013年1月に竣工した那覇市新庁舎 緑を豊富に取り入れたデザイン

 

 

このプロジェクトは時間をかけてじっくりやらせてもらいました。弊社の会長自らがルーバーを設計しており、全社の思いが特に強く入ったプロジェクトだという印象が強かったですね。苦労を感じるよりも、すごいものを設計してる、という誇りのようなものを感じながらの作業でした。

※4 ルーバー
薄くて細長い羽根板を平行または格子状に組み、建物の開口部や照明器具に設けて、風や雨、光、埃、視界などを調整する部材のこと。

この新庁舎に使われている免震構造について詳しく教えてください

「那覇新庁舎の評定では
緑を豊富に取り入れている
庁舎建築だと先生方に
驚かれました」砂川 秀紀氏

免震層を建築物の最下部に設ける基礎免震で、75基の免震部材で地上12階、地下2階建ての建築物全体を支えています。この免震部材には、設置スペースが小さく施工性に優れたダンパー一体型積層ゴムアイソレータを用いました。積層ゴムアイソレータは、薄いゴムシートと鋼板を交互に積層し、加硫接着により一体化させたもので、中心部にはダンパー機能を担う鉛プラグが挿入されています。

極めて地震の少ない沖縄で、免震技術に取り組む意義とはなんでしょうか

免震構造を採用するとコスト的には嵩みますが、住んでいる方や利用者に安心していただけるという大きなメリットがあります。2010年には、沖縄で100年に一度と言われる地震が起こりました。マグニチュード7.0で、本島では震度5弱を観測した場所もあります。この地震の時、最初にお話ししたフレスコア旭橋では、免震機能のおかげでエレベーターが止まることもなく、室内の被害も最小限に抑えられたと聞いています。

沖縄では地震が少ないのは事実ですが、例えば病院、マンション、新聞社など、機能が止まると大きな被害につながるような建物に対しては、積極的に免震構造を提案しています。コストは上がりますが安心感が増しますからね。

台風の通り道である沖縄で、風による振動に対する対策についてはどうお考えですか?

風揺れに対しても解析を行い検討しますが、地震に比べるとだいぶ小さい振動ですので、建物の安全性としては問題ありません。また、先程お話ししたダンパーが揺れを早く止める役割を果たしてくれますので、風による揺れを抑制するといった点でも効果が出ています。居住性もそれだけ確保できていると考えています。



今後の展望 〜免震から制振へ〜

今後の展望と構造計画研究所に対する要望があれば教えてください

「今後は制振技術を習得し
お客様への提案の幅を広げ
ていきたいです」
構造設計部 部長 島袋 敦氏

免震設計に関するノウハウは社内でだいぶ確立しました。コンペもよくあるんですが、最近では積極的に免震構造を提案することで、安全性や居住性を上げ、お客様に満足いただける設計をご提供できていると自負しています。

今後は制振の方に手を広げていきたいですね。免震と制振の両方を独自でできるようになると、お客様により幅広い提案ができるようになると思いますので、ぜひチャレンジしたいです。

構造計画研究所の技術支援にはすごく満足しています。地震波を作成してもらったり、解析実行の際にどんな情報が必要なのかを教えてもらったりできますし。ダンパーの開発や3次元免震装置を備えた社宅など、構造計画研究所は常に新しい技術に取り組んでいますよね。今後もそういった技術やノウハウを提供いただき、お客様に喜んでいただけるようなプロジェクトをいっしょにやっていきたいと考えています。

 



取材日:2013年6月

株式会社国建について

創立 1960年9月
本社所在地 沖縄県那覇市
ホームページ http://www.kuniken.co.jp

 

この事例に関するお問い合わせ

エンジニアリング営業1部
TEL:03-5342-1136
E-mail:kaiseki@kke.co.jp

※記載されている会社名、製品名などの固有名詞は、各社の商標又は登録商標です。
※記載されている会社名、製品名などの固有名詞は、各社の商標又は登録商標です。