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導入事例
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電磁界解析ソフトウェア EMS導入事例日本ライフライン株式会社 様
リサーチセンター開発課 光宗倫彦氏(左)、田中裕生子氏(中)、主任 小島康弘氏(右)
日本ライフライン株式会社の概要
戸田リサーチセンター
日本ライフラインについて教えてください
日本ライフライン株式会社は、1981年に心臓ペースメーカーの輸入商社としてスタートしました。循環器領域での取扱商品を拡大し、1999年からはガイドワイヤーやカテーテル類の自社開発を開始して、現在では、商社であると同時に医療機器メーカーとしての顔も持つようになりました。
東京本社のほかに全国に30ヶ所の営業拠点を有し、開発製造拠点としてリサーチセンターとファクトリーを埼玉県戸田市に置いています。
SolidWorks上で動く電磁界解析ソフトを求めて~ベンチマークの結果、導入
構造計画研究所から導入したソフトについて教えてください
この度導入したのは「電磁界解析ソフトEMS」です。カテーテルの新商品開発のために導入しました。構造計画研究所からは、先に熱流体解析ソフト「SolidWorks Flow Simulation」を導入していましたので、同じように3次元CADソフト「SolidWorks」上でシームレスに動く電磁界解析ソフトを導入し、連動させてシミュレーションの幅を広げることを目指しました。
2012年5月にベンチマークテストとして、実際のカテーテルモデルを使用して解析を行いました。解析結果と実験結果が合致し、シミュレーションが効果的であることがわかり、導入を決定しました。導入開始は2012年7月でした。
実験と一致した解析画像。電流密度・電位分布が可視化できることが重要
自社開発の理由~アブレーションカテーテルとは
自社開発のカテーテルとはどのような製品ですか
不整脈の診断に用いるEPカテーテル、不整脈治療を行うアブレーションカテーテルとカテーテルに電流を送る高周波発生装置などがあります。
自社開発のきっかけはなんですか
医療現場のニーズに応えたいと考えたからです。心臓カテーテルはそのほとんどが輸入品で、メーカーにより形状も異なります。カテーテルは手元のハンドルを動かして操作しますが、医師の手の動きのとおりに先端が動かなければなりません。また、医師ごとに使いやすいカテーテルの形状も異なり、限定されたポイントで必要とされる製品もあります。かゆいところに手が届くような商品開発を行うためには、医師とディスカッションをしながら開発できる体制が必要でした。
各種カテーテルが並ぶリサーチセンターエントランスのショーケース。
右上がアブレーションカテーテル
アブレーションカテーテル 先端に電極が3つ並ぶ
導入したEMSは、最初にアブレーションカテーテルの開発で使用しました。アブレーションカテーテルは、不整脈の治療に使用するカテーテルで、先端にプラチナ基合金の電極が付いています。
患者さんの心臓内に挿入したアブレーションカテーテルと患者さんの背中に貼られる対極板との間に高周波発生装置から500キロヘルツの電流を流し、先端電極と接触した心筋組織に発生する抵抗熱によって、不整脈の原因となる心筋の異常部位を焼灼(しょうしゃく)する治療法です。
この場合、電極に発生する電流密度が非常に重要です。効果的な焼灼を行える電極を開発するために電磁界解析が役立っています。
実験前のモデルの絞込みにシミュレーションを活用
EMS導入前はどのようにしていましたか
EMS導入前は何パターンもの試作品をつくり、豚の心臓を使用して繰り返し実験を行っていました。例えば、製品化候補が4モデルあるとすると、実際にその4モデル分の部材を発注し、納入された部材をわれわれ自身で組み立て、出来上がった試作品を使って実験し、ということを繰り返して1モデルに絞っていました。
導入後はどう変わりましたか
SolidWorks上で先ほどの4モデルを解析し、実験まで進める必要があるかどうかを判別します。先ほど、電極の電流密度、電位分布が重要だとお話しましたが、EMSによる解析でそれらを可視化し、比較検討することで、実験まで進めるモデルを絞りこむことができ、実験のための手間やコスト、時間が大幅に削減されました。
EMSの導入効果および使い勝手
開発課主任 小島康弘氏
EMSの導入効果をもう少し詳しく教えてください
開発のフロントエンドでのシミュレーションで複合的な効果がありました。具体的には以下の3点です。
1.より信頼性の高い製品開発のために実験と並行して設計検証が行えること
アブレーションカテーテルでは、シミュレーションで電流密度がより大きくなる電極の形状を探し、焼灼の効果がより良い形状を比較検討の上、選定しています。実験前の解析で設計検証を行うことで効率的な設計ができ、より品質の高い製品開発が実現できます。
2.試作モデルの絞りこみによる開発期間の短縮と開発コストの削減が図れること
最近の全体的な傾向として商品化までのスピードが速くなっています。実際に部材を発注し、手作業でカテーテルを組みたて、実験を繰り返すという手順では時間がかかりすぎます。しかも実験の結果合格しなければ、使わなかった部材は廃棄となります。実験前のシミュレーションで、モデルの特定ができれば、開発期間短縮・経費削減へ大きく貢献できます。
通常の試作では、設計、部材発注、カテーテル製作、評価の一連の流れで1ヶ月半はかかりますので、設計案として出たモデルを全て実験にかけるとなると、かなりの期間が必要となります。それが解析ツールによって、設計-解析で絞り込んだモデルだけを実験すればいいので、時間の削減は大幅なものになりました。
3.プレゼンツールとしての効果
実験結果をカラフルなチャートで示せるので、他の人に伝えるのが非常に楽になりました。外部への説明で豚の心臓の実験結果を見せるわけにもいきませんので、説得力の高いプレゼン資料を作成するためにもこのようなソフトは必要でした。
本社の広報担当者からも、カタログにしやすいしプレゼン資料にも使いやすいと喜ばれています。
開発課 田中裕生子氏
EMSの使い勝手はどうですか
なにより計算が速いですね。そして、SolidWorksにアドオンして使えるので、CADに慣れている設計者にとっては、もともと組み込まれていたメニューの1つであるかのように違和感がありません。
操作もわかりやすくて、次にどこをクリックすればいいか直感的にわかるような流れになっています。解析に全く馴染みのない人でも簡単な手順書を見て自分で操作できたので、そこはいいと思いました。
時間をかけて試作を繰り返した結果、却下されて悲しい思いをしたこともありましたが、今はこのソフトで充分に絞り込んでから試作を行うので、試作の精度が飛躍的に向上しています。
今後の期待
今後どのような展開をお考えですか
導入前のベンチマークテスト通り、導入後の解析データと実験結果も一致して、シミュレーションが効果的であることが実証されました。
開発課 光宗倫彦氏
EMSを導入して間もないのでまだ使っていない設計者も多いのですが、設計者は全員がSolidWorksで設計を行っていますので、シームレスに解析できるEMSを設計段階で使いたいと言っています。
試作用部材の見積もりを取り、発注し、試作品を制作し、実験を行うという手間と費用を考えると、EMSのようなソフトを使っていくことで設計が相当速くなると思います。
1回1回の解析データを次の設計に活かすこともできるので、全体がどんどん速くなりますね。このようなサイクルを重ねることで、ノウハウを蓄積し、実験と解析の相関性を把握したいです。
また、これはEMSとは全く別のアプローチですが、解析ということを考えると、カテーテルの動きがスムーズかどうかという感覚的なシミュレーションも行いたいですね。カテーテルの動きに関しては、医師によっても要望が違います。今後、素材による動きの違いなどもシミュレーションで予測することができればと考えています。
取材日:2012年8月
日本ライフライン株式会社について
設立 1981年2月6日
本社所在地 東京都品川区
ホームページ http://www.jll.co.jp
この事例に関するお問い合わせ
SBDプロダクツサービス部・SBDエンジニアリング部
TEL:03-5342-1051
E-mail:sbd@kke.co.jp
Web:https://www.sbd.jp/