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設計支援システム導入事例
株式会社横森製作所 様

「設計から製造までデータを一気通貫する設計支援システムを導入。全体の作業時間を30%削減することができました」
株式会社横森製作所
常務取締役(兼)技術部 部長 門井由典氏(左)経営管理部 システム課 丸山敏男氏(右)
ビルの鉄骨階段や手すりの設計・製造を専門に手掛ける株式会社横森製作所(以下、横森製作所)は、2002年から3次元CADを活用した階段設計支援システムを運用。設計から製造までデータが寸断されずに整合性を維持するとともに、3次元による視覚的認識効果によって設計ミスを激減させ、手戻りによる時間的・コスト的なロスを解消することを実現した。

国内の超高層ビルの上位8割以上に横森製作所の階段が設置

横森製作所様の事業内容についてご紹介ください

ビル、競技場、マンション、戸建て住宅などに据え付けられる鉄骨階段と手すりの専門メーカーで、設計から、製造、施工までを一貫して行っている、日本でも珍しい会社です。全国に6つの事業所と7つの工場を持ち、合弁で上海にも拠点を構えています。
通常、鉄骨階段は、建築業者がビル本体の鉄骨ファブリケーターに依頼して作るのが一般的ですが、当社は独自の研究によりボルト接合による組み立て式階段のノウハウを開発し、さまざまな設計に柔軟に対応することで、国内の超高層ビル上位50のうち44のビルで当社の設計した階段が使われるなど、階段専業の技術的価値を認めていただけるようになりました。



創業者の思いは一貫した設計・製造システムの実現

CADの導入経緯と開発環境の状況について教えてください

業務フローとしては、受注した案件の施工図を作成し、それを施主(設計事務所やゼネコンなど)の承認を得てから工作図を作成し、部品製作や全体の組み立てを行ないます。

横森製作所における階段設計から製作、工事までの業務フロー

横森製作所における階段設計から製作、工事までの業務フロー


1980年代までは図面を手作業で描き、それを基に部品を1品ずつ拾い出し、寸法を書き込んで部品加工図として作成していましたが、ボルト接合技術を強みにしているため、組み立ての際に誤差を生じさせないようボルト穴の工作精度が非常に重要となり、作業効率に限界を感じていました。

そのため、それまでの手書き設計を廃止し、NC(数値制御)データを工作機に受け渡し高精度に部品の加工や組み立てを可能にするよう、1986年にUNIXベースの2次元CADを独自に開発。EWS(Engineering Workstation)上で運用を開始しました。

当時はゼネコンでさえあまりCADが活用されていなかった時代でしたが、創業者の横森精文は、作図の作業効率を高めて省力化を図り、1つの設計図面から加工情報を引き出して部品図を抽出できるような一貫したシステムの実現を早期に構想していましたので、CAD化は自然な流れだったといえます。



オブジェクト指向の汎用3DCADを導入するプロジェクトが開始

CADの3次元化に取り組んだ目的とは何だったのでしょうか

従来のCAD設計ではまず数値を入力し、プログラムでバッチ処理を実行した後に、部品加工図を出力するという方法を行っていましたが、階段設計の複雑化に伴って機能追加が次々と発生し、2次元CADをプログラムで全て作ろうとするとステップ数が肥大化して、処理に遅延が生じるなど業務に支障が出ていました。
また、階段は加工が複雑で部品数も多く細かいため、加工図の出力後に修正が度々発生します。数値入力段階に戻るのは大変なので、つい加工図面だけを修正してしまうと元データと加工図に齟齬が発生し、それが大きな問題となっていたのです。

常務取締役(兼)
技術部 部長 門井由典氏

具体的には、各部門で以下の問題点が指摘されていました。
○設計部門
・設計変更や新製品のプログラム修正に時間とコストがかかる
・自動設計のパラメータ入力が多項目にわたり煩雑
・設計データの資産活用が図れない
・施主や外注業者とのデータ交換が非効率
○工作図部門
・施工図から工作図への過程で不整合が発生
・工作図作成に時間がかかり製造工程を圧迫
・製品仕様や部品番号が不統一
・規格外への対応が困難
○製造部門
・帳票類(材料表、検査表、納品書など)の作成が手作業のため労力を要する
・部品の出荷単位での仕分け管理がシステム化されていない
・製品の組み立て時に施工図と工作図を照合しながら組み立てるため図面読解力が要求される


経営管理部 システム課
丸山敏男氏

問題を改善するために、新CADシステムの構築が必要とされ、以下の要件の実現が目標とされました。
・設計から製作までのデータの整合性
・最終図面に近い形での階段設計
・平面図と立面図との連動
・完成状態を意識した組み立て・施工

2000年頃にはPCの性能も向上してEWSからのダウンサイジングが可能になるとともに、オブジェクト指向の汎用3DCADを導入するプロジェクトを開始。当時建築業界でスタンダードとなっていた「AutoCAD 2000」をベースに、従来の2次元CADシステムを改良した新階段設計支援システム「CADYS21」の開発がスタートしました。
その際、私たちの要求に沿って最適な提案をしてくれたのが構造計画研究所だったのです。



CADYS21の開発パートナーに構造計画研究所を選んだ理由

構造計画研究所をCADYS21の開発パートナーに選んだ理由とは

構造計画研究所は建築分野に強く、ソフトウェア開発力も備えている上にAutoCADにも精通していたからです。全てにバランスのとれた会社は他にありませんでした。
そこで同社には、設計、工作図、製造の各部門をヒアリングし、どのようなCADシステムが必要なのかを半年~1年ほどかけてリサーチしてもらいました。
その結果、最大の課題だったデータの一貫性の問題を解消するために、1つひとつの部品を3Dでモデル化して組み合わせる3次元CADを導入し、可能な限りプログラムの部分を少なくするという手法が提案されたのです。



2次元に慣れたベテラン設計者にも配慮した3次元CAD支援システム

CADYS21の機能と、導入にあたり工夫したエピソードがあれば教えてください

CADYS21では、まずウィザード形式で基本情報を入力し、階段の種類や段数、幅、回り方向を設定し、平面図・立面図情報の定義を行うことで、3次元の階段モデルを自動的に構成します。その3次元階段モデルでは、部品配置・変更・削除、レンダリングなどが可能なほか、さまざまな施工図を生成して承認業務をサポートします。

また、データをツリー構造で格納しているため、必要な部分の数値や計算式を入力することで加筆・修正を自動実行し、平面図や立面図の全てを自動的に反映することが可能です。


CADYS21の施工図システムにおける基本機能

CADYS21の施工図システムにおける基本機能


施工図による承認が完了した後は、3次元データを工作図システムに受け渡し、工作図の作成に加え、プラモデルのようにひと目で理解できる組み立て図などが作成できるほか、仕訳や納品書などの生産関連の帳票類も自動的に作成します。

2次元の図面に慣れているベテランの設計者の中には、3次元の図面上で作業することに戸惑う人もあったため、3次元図面を2次元図面であるかのように表示させて、2次元図面を自動的に作成することも可能にしました。
なお、3次元図面で設計を行っていても客先に提出する図面は2次元の図面が中心です。提出先ごと、工期のタイミングごとに2D図面化の処理が容易にできるような工夫も加えています。



工作図の作成時間が1週間から最短1日に短縮

CADYS21の運用効果についてご説明ください

一般的に、オーダーメードで製品を製造している企業の場合、セクションごとに組織がサイロ化していると、意匠設計と構造設計とが全く異なるシステムを使っているケースが多く、設計と製造でデータの整合性を保つのに苦労しているように見受けられます。
当社も全てオーダーメードで階段を納入していますが、設計側と製造側との意志疎通を非常に重要視しているため、2002年から本格稼働したCADYS21を常に進化させることによって、設計から製造までデータが寸断されずに一気通貫しているツールに仕上がっていると思います。

旧来のCADシステムでは、修正が発生すると平面図と立面図の両方を手作業で変更し、詳細図などさまざまな関係図面にも同様に修正を反映しなければなりませんでしたが、CADYS21では平面図を修正すれば立面図も詳細図にも自動で修正が反映されるようになった上に、部品加工図にも同時に展開するようになったため、修正漏れや施工図システムと工作図システム間のデータ齟齬をほぼ解消できました。

その結果、新規に作図する場合は登録作業が必要になるものの、その後の新規作図〜修正~工作図作成~帳票作成の作業効率が格段に向上し、全体の作業時間を30%削減することができました。


作業効率比較

旧システムとCADYS21の作業効率比較
新規作図、修正、工作図、帳票の作成時間が30%程度削減

また、以前は、図面を描き客先の承認を得て、部品加工図の作成に1週間ほどはかかっていましたが、モデルさえしっかりと作っておけば、最短1日で出力できるので、設計側の作業が迅速になり承認レスポンスの向上にも効果があります。

特に、CADYS21に移行したことで作業が格段に効率化しています。3次元による視覚的認識効果によって設計業務の習熟が従来よりも短期に可能になるほか、2次元の図面では読み取れなかったことによる設計ミスが激減し、手戻りによる時間的・コスト的なロスが解消していることも大きなメリットです。




CADデータを生かし切る機能強化への提案に期待

今後の展開予定と、構造計画研究所に期待することがあればお聞かせください

建築業界ではBIM(※)がトレンドになっており、3次元データを必要とする設計事務所やゼネコンも増えている中で、当社もBIMを標準のデータフォーマットにすることを検討しています。

また、新たなCADソフトの選定も含めたCADYS21の機能強化も視野に、階段のトップベンダーとしてさらなる品質向上や業務上のコミュニケーション強化など、CADデータを生かし切る差別化策を再検討しているところです。

当社には社員全員で作った“50の心得”という社是があり、その中のひとつに、「自分が引いた一本の線は、全作業者を支配する。よくよく心すべし」という言葉があります。CAD図面には全ての情報が備わっており、設計や組み立てのみならず、予算・積算、構造計算、ロジスティック計画などが可能です。
それらをいかに引き出して、営業協力や工事支援などに反映させるかが今後の課題になってくると考えています。

構造計画研究所のスタッフは全員、建築と設計に関する深い造詣を持ち、非常に優秀であるとともに、会社全体でサポートしてくれるので信頼できるイメージがあります。今後も引き続き、将来を見据えた新しいシステムの提案を大いに期待しています。

※ BIM(Building Information Modeling):2次元の図面情報からさまざまな3次元CADソフトを連動させ,建物とそれに関わる多様な属性情報を3次元建物モデルに統合認識させた建物データベース。設計から施工、維持管理に至るプロジェクト全体で活用する建築手法。



取材日:2012年9月

株式会社横森製作所について
設立 1951年12月
本社所在地 東京都渋谷区幡ヶ谷
ホームページ http://www.yokomori.co.jp

この事例に関するお問い合わせ

建設DX営業部
TEL:03-5342-1122
E-mail:con-dx@kke.co.jp

※記載されている会社名、製品名などの固有名詞は、各社の商標又は登録商標です。
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