地震リスク評価コンサルティングサービス導入事例
東邦チタニウム株式会社様

東邦チタニウム株式会社

東邦チタニウム株式会社 内部統制推進室
(左から)増山 豪氏、室長 菊地 耕二氏

「地震リスク評価コンサルティングのメリットは『工場全体』を地震シナリオに沿って『高い精度で』評価ができることです」

世界有数の金属チタン製錬メーカーである、東邦チタニウム株式会社(本社工場:神奈川県茅ヶ崎市)は2013年秋、地震リスクに対する事業継続計画(BCP)推進のため地震リスク評価コンサルティングを構造計画研究所に依頼した。どのような課題を持ち、また築年や用途が混在する多数の建物のリスク評価をどのように行ったのか。同社茅ヶ崎工場内部統制推進室室長 菊地耕二氏、増山豪氏にお話しを伺った。
もくじ
  1. 1. 東邦チタニウム株式会社から世界へ~「軽く・強く・錆びず・低アレルギー」チタンの需要拡大
  2. 2. 地震リスク評価コンサルティング依頼の背景〜BCP策定の課題と必要性の再浮上
  3. 3. 地震リスク評価コンサルティングで、地震対策の現実的な一歩を踏み出す
  4. 4. 憶測による対応から根拠に基づいた戦略的判断へ~すべての建物評価から見えたもの
  5. 5. 全体を見渡したリスク評価と専門的視点からのサポート

東邦チタニウム株式会社から世界へ~「軽く・強く・錆びず・低アレルギー」チタンの需要拡大

茅ケ崎本社工場

上:茅ヶ崎本社工場
下:スポンジチタン 製錬工程からの
最初の形態

― 東邦チタニウム株式会社の事業内容を教えてください

東邦チタニウム株式会社では1953年に神奈川県茅ヶ崎市で創業して以来、海外から輸入した鉱石を国内工場で製錬し、金属チタンを製造しています。

チタンは軽く、強く、錆びない上に人体への害がなく、アレルギーを起こしにくいため、人工骨やインプラントの土台、またピアス・時計バンド・眼鏡に使用されています。製錬の難しさもあり、世の中に出たのは比較的最近ですが、その特徴のため産業製品から日用品まで様々な場面へ徐々に浸透しており、これからの素材と言われています。

工場で製造したチタンは国内・海外に約50%ずつ販売しています。近年では加工技術の進歩を活かして、浅草・浅草寺にチタン製の屋根瓦を導入しました。見た目は土瓦そのものですが、重さは5分の1となり耐震性が格段に上がり、またチタンの錆びにくさゆえに何百年もの耐久性が期待できます。

弊社では茅ヶ崎工場の他にも、チタンや化学品を扱う工場を国内計5箇所に設置していますが、本社工場を置いている茅ヶ崎地区は、3つの地震(東南海、東海沖、首都圏直下型)予測があり、さらに近くに断層もありますので、以前から地震対策はBCP(事業継続計画)策定における重要事項でした。



地震リスク評価コンサルティング依頼の背景〜BCP策定の課題と必要性の再浮上

― 地震リスクに対するBCP(事業継続計画)を進めるにあたり、何か課題はあったのでしょうか

実は数年前、全社的にリスク調査を行ったところ、茅ヶ崎工場では地震リスクが一番高いという結果を得ました。設立から約60年以上経つ工場には、1981年の新耐震基準法以前の建物が相当数あります。必然的に老朽化も進み、耐震性に対する不安がありましたので、当時のBCPではメイン工場を中心に耐震診断を行い、弱い部分を補強しようと計画していました。

しかし、一般的な建物の耐震診断は、1棟で数百万円から1千万円、新耐震基準並に補強するためには億単位の金額がかかります。また一般的なビルとは異なり、工場内部には機械装置や炉が設置されていたり、配管もいたるところに張り巡らされていたりと複雑です。その上茅ヶ崎工場の敷地には、金属チタン工場の他にもその関連品や化学品の工場130棟以上が建っています。これらを手当たり次第診断する訳にも行かず、計画進行中にリーマンショックの影響もあり、BCP推進とそれに伴う耐震化計画の意思決定をなかなか進められませんでした。

2011年3月に起きた東日本大震災の後、内外からの要望によりBCPの必要性が高まり、非常に悩みました。「数年前に止まった計画をどのように見直すか」「130棟以上ある建物のどこから手をつけるべきか」、大手の建設会社はじめ、付き合いのある建設会社にも聞きました。そんな時に弊社内のある事業部が、以前参加した展示会で知った構造計画研究所という会社から話を聞くというので、我々も同席させてもらったことがコンサルティング依頼のきっかけになりました。

― なぜ再びBCP推進の必要性が高まったのか、具体的に教えていただけますか

理由は大きく分けて2つありました。

まず1つ目は、国内外の納入先のメーカーに対し、どのような地震対策をとっているか、東邦チタニウムとしてのBCPを説明する必要性が出てきたからです。弊社は欧米向け輸出が多いのですが、納入先からすれば、日本のような地震の多い極東の小さな国から、重要な部品や素材を調達していることには不安があります。また東日本大震災以降は、国内の納入先からもサプライチェーンの安全確保の一環としてBCP策定の要請が増えています。

2つ目は、企業の社会的責任と社員の生命・安全を確保するためです。今日は創業当時とは異なり、周りには住宅地が増えています。近隣への責任もありますし、従業員の安全も守らなければならず、こういった環境の変化により我々としても改めて対策の必要性を感じていました。

このような内外からの要望の増加によって、一度止まっていたBCP推進の必要性が再浮上しました。



地震リスク評価コンサルティングで、地震対策の現実的な一歩を踏み出す

― 構造計画研究所による提案のどの部分を評価いただいたのでしょうか

現状を相談したところ、工場全体の被害状況の分析・評価を行う簡易レベルでのリスク評価をご提案いただきました。個々の建物の地盤や構造診断などの詳細レベルの評価ではありませんし、耐震補強を実行するには正式な耐震診断が必要になることは分かっていました。しかし、一般的に1千万円近くかかる耐震診断を何棟も行うのではなく「まずはどこから手を付けるべきかを決めるための評価」を行うというご提案内容が、何よりも弊社の目的に合っていると思いましたので依頼を決意しました。

菊地耕二氏

地震の想定シナリオに即した評価
を行う会社は他にありませんでした
内部統制推進室長 菊地耕二氏

― 地震リスク評価はどのように行われたのでしょうか

対象130棟の面積や構造、外壁の状態、建造年月などの構造種別の資料を事前にお渡し、評価の実施に向けて動き出したのは2013年10月でした。また構造計画研究所と全棟の現地調査を行い、例えば増築内容や構造体の改造の有無確認、取り扱っている酸性物質によって腐食や劣化などで土台が弱くなっていないかなど、データ資料からだけでは分からない部分まで診てもらったのです。

その上で、茅ヶ崎工場で起こり得る地震のシナリオを3パターン選定し、地盤の特徴、建造物のデータと合わせて液状化などの解析を行っていただきました。2013年12月には、3つの地震シナリオに沿った結果が提示され、それぞれのシナリオの発生確率と現状の建物であればどのくらい危険があるのかを図で説明したレポートをいただきました。



憶測による対応から根拠に基づいた戦略的判断へ~すべての建物評価から見えたもの

― 評価をご覧になった感想をお聞かせください

今回実施した評価の最大のメリットは、全ての施設に対する地震リスクの評価を得ることができた点です。今までのように個別の古い施設への応急処置的な対応ではなく、まずどの建物を耐震診断、そして補強を検討するべきかがはっきりし、既存の建物が今後どのくらい使えるかなど、経営的にも戦略的にも投資判断を支える資料となりました。

実際に大丈夫だと思っていた建物が意外と弱く、予想とは逆の結果となることもありました。それは建物の高さや、地震の揺れ方によっても細かい差があるなど、なぜそうなるのかという質問に専門家の視点で答えていただき、納得のできる評価でした。単に古いか新しいかだけではなく、構造や他の要素によってその建物が本当に安全かどうかが決まることを知ったのも初めてでした。

評価レポート例:「周辺地域の震度と液状化発生確率」

「周辺地域の震度と液状化発生確率」

▲ 神縄・国府津 - 松田断層帯による地震が発生した場合、
揺れの強さは震度6弱(左)/液状化危険度は低い(右)とされた。

現地調査に基づき、例えば、年代や構造が同じような建物に対して被害率を出すときには、劣化があったり構造体に何らかの不備があったりした場合は劣化係数がマイナスに、補強されていればプラスと見るという形で進めていただき、実態に近い結果が出たのではないかと思います。



全体を見渡したリスク評価と専門的視点からのサポート

― 評価レポートはその後、どのように活用されましたか

今回の評価レポートを土台に、今後の補強計画の合意形成に向けて内部検討を行いました。 ただ、いただいたレポートの建物の耐震性だけで対策優先度を決めるのではなく、常時働く従業員の人数、外に漏れる可能性のある有害物質の有無、事業上重要な設備が設置されているかなど、考慮すべき情報を私たちの方で付け足し、最終的にリスクが高いと結論づけた建物を経営層に報告しました。

増山豪氏

私の読んでいた学術的な著書に、
偶然にも構造計画研究所の方も
執筆されていました
内部統制推進室 増山豪氏

今回、構造計画研究所には大変お世話になりました。12月のレポート受領後、2014年1月には弊社の経営層に対するプレゼンを行っていただき、様々な質問にも的確に答えていただきました。弊社のように用途の異なる建物が混在し、かつ数が多いところの全体を見渡したリスク評価を行ってくれる会社は他にはないと思います。地震にまつわるリスクをどう評価するかはかなり困難な課題でしたが、構造計画研究所にコンサルティングを行っていただき、具体的なアドバイスを頂けたのは非常に助かりました。なお依頼後で気づいたのですが、事前スタディに使用していた図書の1つにご担当いただいた方が執筆されていて、こうした学術的な研究基盤も、構造計画研究所の強みのひとつだと感じました。

― 次の予定はどのようにお考えでしょうか

今回の評価で対策を実施すべき工場棟を絞り込めましたので、今後は将来のビジネスパターンを想定し、その最大公約数を選定しているところです。まずは、10年後にこの茅ヶ崎工場がどうなっているかを考え、その時点で残っていなければならない設備を選定し、最初の耐震診断を行う予定です。

これから本格的な診断、補強に取り組むことになりますが、構造計画研究所には今後とも専門的な視点からのサポートをお願いしたいと考えています。



取材日:2014年5月
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東邦チタニウム株式会社について
設立:1953年8月
本社所在地:神奈川県茅ヶ崎市茅ヶ崎3-3-5
ホームページ:http://www.toho-titanium.co.jp/index.html別ウインドウが開きます
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この事例に関するお問い合わせ

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TEL:03-5342-1136

E-Mail: kaiseki@kke.co.jp

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この事例で使われているソリューション
地震リスク評価コンサルティング