災害リスク評価コンサルティングサービスおよびBCP策定支援 導入事例
株式会社扇島パワー 様

株式会社扇島パワー 様

株式会社扇島パワー (右から)副所長 兼 環境保安室長 一宮 弘司氏、環境保安室担当マネージャー 秋元 満氏

「的確な『災害リスク評価』で、起こりうる被害をリアルに認識。実効性のあるBCP策定に結びつきました」

自然災害をはじめとする緊急事態に備え、事業資産の損害を最小限にとどめつつ、事業を継続し早期復旧するための方策を取り決めておくBCP(Business Continuity Plan=事業継続計画)が企業で注目されている。火力発電所「扇島パワーステーション」を運営する株式会社扇島パワー(発電所、企業ともに横浜市鶴見区)は、2017年4月から、構造計画研究所と森総合研究所が提供するコンサルティングサービスに基づくBCPの運用を開始した。他社との比較もある中で当サービスを選んだ理由、BCP策定プロジェクトの評価について、同発電所 副所長 兼 環境保安室長の一宮 弘司氏、環境保安室担当マネージャーの秋元 満氏にうかがった。

 もくじ
  1. 1. 東日本大震災の経験を踏まえて
  2. 2. BCP策定には、ソフト・ハード両面の考察が必要
  3. 3. 災害リスク評価の結果、安心感が高まった
  4. 4. 自分たちで作り、ノウハウを残せるBCPに
  5. 5. 運用管理が継続される体制をより堅固に

東日本大震災の経験を踏まえて

一宮弘司氏

副所長 兼 環境保安室長
一宮 弘司氏

― 発電所の概要を教えてください

当扇島パワーステーションは、東京ガス株式会社と昭和シェル石油株式会社が共同出資する大型LNG火力発電所です。ここでは、LNG(液化天然ガス)を燃料に、ガスタービンと蒸気タービンを組み合わせたガスタービン・コンバインドサイクル発電という、省エネルギー性に優れた発電を行っています。現在、3基が稼働し、出力は合計で約122万kW、一般家庭でざっと200万世帯分の電力を供給しています。社員は、両出資会社からの出向者が中心で、常駐社員は20名弱の体制であり、同規模の発電所と比べ、非常に少ない人数で運営しているのが特長です。(一宮氏)

― BCP導入を構想したのは、どのような経緯だったのでしょうか

私は、2013年9月に中途採用で昭和シェル石油株式会社に入社し、すぐにこの発電所に着任することになりましたが、当初は3号機の増設工事の仕事をしておりました。その後、2015年4月より環境保安を担当する副所長として仕事を任せられることになりましたが、保安や防災に関する経験も専門知識もほとんどない状態で、最初は何から手を付けたらいいのかさえ分からない状況でした。ただ、前職にて、東日本大震災による地震や津波による被害を目の当たりにした経験があり、あの災害がもしここで起こったら・・・と考えると、非常に新しい発電所であるが故に「このままでは危ない」という思いは持っていました。

BCP策定の必要性も着任当初から感じていたため、同時期に着任した環境保安室の秋元さんと一緒に関連するセミナーなどに出かけて話を聞き始めましたが、特に首都直下地震での被災想定等を聞くほどに会社に対する危機感も次第に強くなりました。ただし、BCPをやるからには形だけではなく、実効性のあるものにする必要があると感じていましたので、1年ほどかけて情報収集と知識の向上に努めたのち、自分の中で「2016年度中には、地震と津波に関する実効的なBCPを策定する」という考えをまとめました。2015年度末に、所長以下、管理職に提起し、実効的なBCPを策定することに一同が賛成してくれました。そこから、本格的にBCP策定プロジェクトがスタートしました。(一宮氏)

― 今回の「BCP総合サービス(下図)」をお知りになったのも、構造計画研究所主催のセミナーがきっかけだったとうかがっています

実は、2016年3月に申し込んでいた当該のセミナーに業務都合で行けなかったのです。すると後日、セミナーの内容をフォローしていただけるというお話しを構造計画研究所(以下、KKE)からいただき、話を伺いに訪ねました。そのときに非常に丁寧な説明をいただいたのがきっかけとなって今回のプロジェクトに至ったのではないかと思っています。もし、申し込んでいたセミナーに参加し、KKEより個別に対応していただくことがなかったら・・・もしかするとこのご縁はなかったのかもしれません。(一宮氏)

「BCP総合サービス」全体図

「BCP総合サービス」は、構造設計/構造解析で多くの実績があるKKEと、
豊富なBCP策定経験がある森総合研究所(以下、森総研)が
共同で提案するBCP策定コンサルティングサービスです。



BCP策定には、ソフト・ハード両面の考察が必要

― KKE/森総研のサービスをお選びいただいた理由はどのようなものでしたか

実は当初は、当社社員だけで策定しようと考えていました。社員が策定しないとその後の維持・運用ができないですし、当然会社として費用はなるべく抑えたいですから。しかし、KKEの丁寧な説明を聞くうちに、BCPの経験がない社員だけでやるのではなく、専門的な知見を持ったプロに必要なサポートを受けることは、実効性のあるBCPを構築するうえでも、また社員の検討に要する時間を大幅に節約できるという点からも、非常に効果的であることに気づきました。

KKEにお願いすることにした決め手の一つは、KKEが電力業界に高い実績を持っていて、なおかつ電力設備の構造や耐震設計といった領域に詳しかったことです。加えて、共同提案して頂いた森総研様は、行政や民間企業において実際に数多くのBCP策定に携わり、貴重な知見を積み重ねていらっしゃることが理解できました。全体として、過去の事例で得た経験、教訓、現場の生の声といったお話にすごくリアリティを感じまして、これならお任せできるのではないかと思いお願いすることにしました。(一宮氏)

― 他社のプランも、比較検討されたとうかがっています

そうですね。コンサルティング会社、プラントメーカー、ゼネコン等の他社からも話を聞きました。しかし、いわゆる「コンサルティングのみ」という提案が多かったのです。いざという時に、実際に設備がどうなるのかというハード面を度外視して、「とにかくルール作りが必要です」といった内容でした。その内容も、すでにある標準的なテンプレートの項目に従って作成するという形が大半でした。それだと、実際にこの“扇島”という場所で役に立つBCPにはなりにくいのではないかと感じたのです。

繰り返しになりますが、BCPは作ること自体が目的ではなくて、防災・事業継続の観点から実効性のあるものでなければならない、というのが私たちの考え方です。BCPはあくまでも手段です。そういう目的に照らした時に、ルール・行動基準といったソフト面と、設備的な対策といったハード面の双方を支援頂ける今回の提案が私たちにはベストだと判断しました。(一宮氏)



災害リスク評価の結果、安心感が高まった

秋元満氏

環境保安室担当マネージャー
秋元 満氏

― 今回は、KKEの「災害リスク評価」を行ってから、実際のBCP策定という手順を踏まれました。振り返ってみていかがですか

首都圏直下型地震が発生した時に、実際にこの扇島地区がどれだけ揺れて、建物や設備、機器がどの程度のダメージを受ける可能性があるのかを客観的に評価していただいたのでとても有意義でした。意味のある事前対策や災害発生時のルール作りができたと思っています。

当発電所では液化天然ガスを燃料に使っている上、発電の過程で利用するために、アンモニアや水素ガスなどの危険物も扱います。電気設備も数多く、構内では高圧電流も流れています。そうした火力発電所ならではのリスクに精通していなかったら、通り一遍のリスク評価になる危険性もあるでしょう。その意味でも、KKEにお願いしたのは正解でした。(秋元氏)

実は、災害リスク評価の結果を聞いて、少し安心しました。予想される被害の程度がそれまで私たちが考えていた想定の範囲内だったからです。予想される損傷の度合いがもっと大きかったなら、ハード面の事前対策としてさらにいろいろことを考えなくてはなりませんでした。しかし、ハード面にはそんなにエネルギーを割かなくても済むことがわかったのです。(一宮氏)

― レポートを見て、それまでの扇島パワー社の防災対策の正しさが立証された、ということですね

根拠を欠いたままに、「こんな甚大な被害がある」というようなシミュレーションを受け取っていたら、ソフト面の策定計画のほうにも悪影響を及ぼしていたかもしれません。
“客観的評価”というのも大事な点で、私たち社内のメンバーが“勝手に”作ったシナリオだとしたら、社内でも信憑性に欠けたものに受け取られていたかもしれません。当社のBCPにとって、電力業界に精通したKKEの「災害リスク評価」は、不可欠だったと感じます (一宮氏)



自分たちで作り、ノウハウを残せるBCPに

― 社内にBCP策定プロジェクトチームを作る際には、積極的に若手の方を起用したそうですね

プロジェクトには、機械設備、電気設備、計測制御というメンテナンスの3部署とオペレーション関係、総務、そして、我々環境保安室から横断的にメンバーを選び、総勢8名のチームで取り組みました。(秋元氏)

策定に当たっては、「実効性のある計画にすること」に加えて、「BCPを適切に維持、運営していくこと」、「策定を通した人材育成」という目標を掲げました。これは、私が外部のセミナーなどを通じて、「BCPは経営そのものだ」という意識を強く持ったことが背景にあります。全社的な視点に立って、より積極的に将来を見据えていく姿勢がなければ、BCPをめぐって実のある議論はできないと思っています。

そもそも、いくら素晴らしいBCPが策定できても、それが全部外注で作り上げられたものであったら、私たちでは運用もできませんし、会社にはノウハウも蓄積されません。ですから、コンサルティングサービスはあくまでもサポートであって、BCP自体は私たちが主体となって構築していかなければ意味がないと考えました。同時に、その作業を通じて、プロジェクトのメンバーに経営的な視点を養ってもらいたかったのです。意識して若手を起用したのは、そういう意味がありましたし、社内にBCPを根付かせるために、トップダウンだけでなく、ボトムアップも加えて相乗効果を狙っていました。(一宮氏)

― BCP策定だけでは終わらせなかったのですね

実際の所は分かりませんが、当初はみんな“やらされ感”で動いていたのではないかと感じたのが、正直なところです。今回のプロジェクトメンバーはBCPの経験があるわけではありませんし、本来は各自が日常業務も行っていますので。

意識変革のきっかけになったのは、やはり「災害リスク評価」だったんです。当初、私は「大規模地震に見舞われたら、どんなことが起こりうるのかを自分たちで考えてみよう」とチームに提起しました。時間をかけて検討しているうちに、「扇島パワーの中には、こんなリスクがあるんじゃないか」という問題意識が各自に芽生え、チームの共通認識になっていきました。そのようなタイミングで、KKEの「災害リスク評価」の結果がはっきり示されたことで、このレポートを基に「だったら、具体的にどんな対策が必要なのか」という方向に、自然に議論が進んでいったのです。

もし、単純に、外部からコンサルタントがやってきて、「ここはこうしましょう」という進め方だったら、そこから先はなかったと思います。このあたりは、森総研様のリードもあって、各チームメンバーが自発的に「どうしたらいいのか」を考え、議論する中で、メンバーも成長できたのだと感じます。(秋元氏)

― どんなところに成長を感じますか

例えば、ある問題について、機械系部署のメンバーが説明します。「災害でこの設備がダメージを受けるとこうなる」、「もし総務の業務が止まったら、自分たちにはこんなことが起こる」と。他部署のメンバーにとっては「へえ、そうなのか」と、生きた勉強になります。互いの部署の視点を相互乗り入れしながら、日常業務だけではなかなか得られにくい“全社的な視点でものを見る目”が備わっていったのではないかと思います。この視点は、ひるがえってこれからの日常業務を行う上でも必ず活きるはずです。(秋元氏)



運用管理が継続される体制をより堅固に

― 今年度から始まったBCPの運用は、どのような体制で臨んでいるのでしょうか

現在はBCP策定時のプロジェクトメンバーを、そのまま運用チームにスライドさせています。BCPを作るだけでなく実際の運用にも参画させて、運用ステージで発生する問題にも対処してもらうことは、若手育成に向けた当初からの方針でした。BCP自体も、出来上がったからと人を入れ替えてしまったら、また一からのスタートになりかねませんから。

現在は、策定したBCPに問題がないかを議論するマネジメントレビューを3ヵ月に1回開いているほか、必要に応じてスポットで会議招集しています。従来から実施してきた避難訓練や防災教育プランニング・実行などについても、この“会議体”が中心になって回しています。 (秋元氏)

― 何もないところから始められたBCP策定プロジェクトですが、ここまでを振り返っての感想をお聞かせください

ひと口にBCPといっても、会社や組織によって、その位置付けや目的は様々だと思います。会社によって定義が違うと言ってもいいでしょう。ただし、その定義を明確にし、かつ経営トップと現場の社員のベクトルをきちんと合致させて取り組むのが、非常に大事だと思いました。BCP策定は経営戦略であるためトップダウンでスタートすることが多いと思いますが、KKEと森総研様には、2016年4月から着任した沖野社長にトップヒアリングという形で率直な意見を聞き出して頂いたのも、とてもよかったですね。BCP策定に関して事前に相談はしているものの、トップと私たち担当部署が考えている方向性が合致していると分かり、早期に全社一丸のプロジェクトとしてスタートすることができたからです。そうしたきめ細かなコンサルティングにも、非常に感謝しているところです。(一宮氏)

インタビューの様子

― 今後の目標やKKEへのご感想・ご要望をお聞かせください

運用が始まったとはいえ、まだ完全に軌道に乗ったわけではありませんから、チーム会議などを通じて、より完成度を高めていきたいです。次なるテーマとしては、インフルエンザ対策を具体化しようと、検討を開始するところです。(秋元氏)

今現在、BCPの運用に関わっているメンバーが未来永劫、変わらないということはありません。会社である以上、人事異動は世の常です。ですが、たとえメンバーが入れ替わっても、きちんと運用管理が継続される体制づくりが今後重要だと考えています。同時に、メンバー以外の他の社員にも、常にBCPを意識してもらえるような取り組みを積極的に推進していきたいですね。

私たち電力会社は、地震を含めた自然災害などの際に必要とされる会社の一つだと思いますが、その供給責任を全うできるように、これからも“災害・リスクに強い企業”を目指していきたいと考えています。(一宮氏)



取材日:2017年7月

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株式会社扇島パワーについて
設立:2003年8月1日
本社所在地:神奈川県横浜市鶴見区扇島2番1
ホームページ:http://www.showa-shell.co.jp/businesssolution/power/lng.html
(※昭和シェル石油株式会社様 公式WEBサイト内)別ウインドウが開きます
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この事例に関するお問い合わせ

新領域企画マーケティング部

TEL:03-5342-1139

E-Mail: bcp@kke.co.jp

https://www.kke.co.jp/bcp/別ウインドウが開きます


この事例で使われているソリューション
災害リスク評価コンサルティング