データセンタ向け熱流体解析ソフトFloVENT導入事例
日本電信電話株式会社 NTT環境エネルギー研究所様

日本電信電話株式会社

日本電信電話株式会社 NTT環境エネルギー研究所
第一推進プロジェクト 電力システムDP 髙橋晶子氏、エネルギーシステムプロジェクト エネルギー最適化技術グループ 松尾啓吾氏

「FloVENTによるシミュレーションで改善点を明らかにし、データセンタの電力削減を実現しました」

東日本大震災以降、電力削減が喫緊の課題となっているNTTグループのNTT環境エネルギー研究所では、FloVENTのシミュレーションを活用し、データセンタ省電力化エネルギーマネジメント技術を開発した。どのような改善が行われたのか、同研究所の研究員 松尾啓吾、髙橋晶子両氏にお話を伺った。
もくじ

NTT環境エネルギー研究所~ICT機器の電力削減を研究

NTT武蔵野研究開発センタ

NTT武蔵野研究開発センタ

― NTT環境エネルギー研究所ではどういった研究をしているのでしょうか

NTT環境エネルギー研究所では、データセンタや通信ビルの空調装置・給電装置の電力を削減し、より高品質・高信頼に運用するための技術を研究しています。

NTTグループが全国に展開するデータセンタ・通信ビルのフロア面積は通信会社の中でも飛びぬけており、グループ全体の電力使用量は日本の売電電力の約1%になります。

そのため、データセンタの省エネ研究は重要課題です。特に震災後は削減化が加速し、大きなミッションになっています。

削減対象電力の主要用途は通信用電力で、通信用機器・ICT装置と、それらを冷却するための空調装置が大部分を占めています。その中で私たちのグループは、空調装置の電力削減に取り組んでいます。

電力削減対象は空調機やサーバが入っている機械室です。削減対策による事故の防止と対策によって生じる変化の事前見極めのため、シミュレーションソフトとしてFloVENTを導入しました。



FloVENT導入の目的:機械室の空調機およびサーバ運用効率化による電力削減

― 電力削減対策で具体例があれば教えてください

近年問題になっているホットスポット対策についてお話します。

一般的な通信機械室の冷却構造

一般的な通信機械室の冷却構造


上の図は通信装置を設置した機械室の構造図です。
空調装置と各通信装置を入れたラックが配置されています。二重床構造になっており、空調装置から出た冷気は二重床を通って各ラックに供給されます。 ラック内の各通信装置から出た排熱は部屋の上部を通り空調装置へ戻る構造になっています。

近年は通信装置の大容量化により発熱量が上がり、ホットスポットという熱溜まりに起因した問題が顕在化してきています。 このホットスポットの冷却を目的とした空調装置の過剰稼動によって、電力消費が増加します。

ホットスポット解消のために以下の対策を行いました。

1、ラック間の気流の改善
2、冷気のショートカットの改善
の2点です。

気流の改善には、気流制御板を設計・設置し、FloVENTを使用して温度への効果をシミュレーションしました。

順に説明します。

ラック間の気流改善のためには吸気面と排気面が交互になるラックの配置が理想です。 しかし、対策前の機械室ではバラバラな状態でした。

ある列の排気が隣の列の吸気面にあたると、その列の装置は冷却効率が下がります。

そこで対策として、排気面に気流制御板を取り付け、気流の流れを最適にし、FloVENTでシミュレーションしたところ、 周囲温度が約3度低減できることがわかりました。

現場(稼動している機械室)でシミュレーションと同条件で実測したところ、同じく3度の温度低減が確認できました。

次に、2番目の冷気のショートカットの改善についてです。
どういった現象かと言いますと、データセンタにはクローズラックの上部にファンがついた強制空冷ラックというものがあります。 二重床から供給される冷気をファンが強制的に吸い上げる構造で、このファンが必要以上の冷気を吸い上げることで周囲のラックに冷気が供給されず、ホットスポットが発生する現象です。

そこで、ファンが吸い上げる風量を適正化し、機械室の均一な冷却方法を検討しました。

風量調整後にFloVENTを使ってシミュレーションしたところ、機械室全体の温度の平準化が確認できましたので、 シミュレーション結果を元に現場でファンの風量を調整しました。

機械室の温度分布図(対策前・対策後)

機械室の温度分布図(対策前・対策後)


上の図は、対策をとる前の機械室全体のラックの吸気部分の温度分布図です。

色のついた○がラックの吸気温度です。右の図が気流改善した後の分布図で、全体的に温度が低くなっていることがわかります。さらに、ラックの吸気の最高点が31.4度であったものが28.5度にまで改善できました。

他には、機械室のグランドデザインという面からの取り組みも行っています。

一例として、全てのラックが均一に発熱している状態では、空調機から遠いラックほど温度が高くなることがあります。このような場合、発熱量の高いラックを空調機の近くに寄せることで、空調機の設定を変えずに機械室全体を冷えやすくすることができます。

これはサーバと空調機の設置位置を適正化することによって冷えやすくなるという考え方ですが、最近ではクラウドコンピューティングや仮想化という手法が広く使われており、上記のような場合、空調機から遠いところで稼動しているVM (Virtual Machine)を空調機の近くに移動させると、VMの処理量に連動して熱負荷も空調機の近くに寄り、サーバ室全体が冷えやすくなるというものです。

― サーバを物理的に動かすわけですか?

設計上はサーバを物理的に空調機から冷やしやすい位置に置くというのが正しい考え方なのですが、既に設計済みのサーバ室ではサーバそのものを動かすのではなく、それぞれのサーバの処理負荷だけを動かすことで、空調機自体の稼動はそのままにより冷えやすくできるということです。
それにより空調の設定が緩和でき、電力削減になります。



FloVENT選定の理由:「説得力ある資料がつくれる結果表示機能」と「解析時間の速さ」を評価

― シミュレーションソフトとしてFloVENTを選んだ理由を教えてください

FloVENTを選んだ理由は、3点あります。
1番目に、データセンタに特化したソフトであること
2番目に、豊富な結果表示機能
3番目は、反復計算が速く、解析時間が短い点
です。

結果表示機能については、研究所自体はレポートの見た目は気にしませんが、対現場では説得力のある資料を準備できることは重要です。

「解析したところこのような結果になり、これこれの効果が出ます」と説明するのにも解析結果がきれいに作りこまれていれば、もちろん開発した技術自体が一番大切ですが、さらにその分説得力が増します。 この結果表示のきれいさは決め手の1つでしたが、実際に使ってみたところ期待以上でした。

― 検討時に他のソフトとの比較はしましたか

しました。有限体積法、乱流モデルを使用してというのはどのソフトウェアでも同じでした。FloVENTは先の3点のほかに、必要な機能が揃っていて、かつ余分な機能がないという点も気に入りました。データセンタの電力削減を目的とした使い方にはFloVENTがマッチしていました。

― 最初に1ライセンス購入され、2ヵ月後に2ライセンス追加されていますが、評価していただいたということでしょうか

そうです、そうです。試行錯誤しながらの使い始めでしたが、すぐに事業部からの要望が増え、解析のボリュームが増しました。そのためにライセンスを追加購入しました。



評価および導入効果:電力削減10%達成と解析結果の説得力

― 導入効果をお聞かせください

先ほど、機械室の空調電力削減の実例をお話しましたが、約10%の電力削減効果が出ています。

そして、繰り返しになりますが、解析結果による現場への説明力アップ効果も見逃せません。

現場に説明するときに、言葉だけでは伝えることが難しい内容も、画像で実施効果を見てもらうことで理解が早まります。

気流制御板取り付けについては、現場で実際に保守を担当する方たちに対し、起こっている問題を説明し、次に解決策として導入する内容を説明します。その際に、シミュレーション前とシミュレーション後を図解で見てもらうことで、問題点と対策の意味を理解してもらいやすくなります。

「一般ソフトに近い感覚で使えます」
第一推進プロジェクト 髙橋晶子氏

逆に現場からも、世の中に既に存在し、効果があるといわれている手法を取り入れた場合のシミュレーションを要望されることもあります。その場合にもFloVENTが活躍しています。

― 使い勝手はどうでしょうか

パワーポイントのような感覚で装置や制御板などの絵を描きやすいですし、CAD的に画面上にモノを配置するときのプロパティの設定もやりやすいです。

構造に関してもライブラリに用意されているのでそれを使用すればいいだけです。 FloVENTはメッシュを自動で切る機能も充実していますし、解析結果に対してきちんと解析できたかどうかの確認もとりやすいです。



困難だったこと:シミュレーションと実測でのデータの合わせこみ

― 先ほどのお話では、シミュレーションと実測が高いレベルで整合していました。ここまで到達するのにご苦労はありましたか

実用までには、うちの実験室でいろいろ試行錯誤しながら、それなりの期間はかかりました。

導入時にはシミュレーション技術のバックグラウンドがなく、立ち上がりの合わせこみのところで苦労するのは、FloVENTに限らず、なにか新しいことを始めるときにはつきものですね。

「導入時に困難なのはあたりまえ
で、むしろ恩恵の方が大きかった」
エネルギー最適化技術グループ
松尾啓吾氏

空気の粘性の抵抗、乱流モデルの選択、メッシュの大きさ、などの1つ1つが現場の機械室にマッチするのか、試行錯誤を重ねながら経験として蓄積して、 先ほどの解析結果になりました。

強制空冷ラックのファンの調整のシミュレーションでは、ファンの風量バランスを実際の機械室に合わせてシミュレーションを行おうとしましたが、うまくいきませんでした。それは実際の機械室の環境にはさまざまな要因があり、実験室のようにはいかなかったからです。

二重床の下の配線が複雑に絡まっていたりすると、実験で設定したファンやラックの風量と同じ結果が出ず、条件を合わせるのには苦労しました。1つ1つの値を少しずつ変化させて合致する場所を探し出すなど、確かに地道な努力はありました。しかし、FloVENTに助けられた場面の方が多かったです。




今後の期待:技術者としては半減どころか10分の1まで削減したい

― 今後、FloVENTを使用してみたい分野はありますか

引き続き電力削減に取り組んでいきますが、今後解析の領域に含めたいと考えていることはあります。

データセンタに特化したソフトという点を評価してFloVENTを使ってきましたが、深く研究すればするほど、壁面近傍や柱・サーバ近傍の熱流体現象をより細かく解析したいという思いが強まっています。 今は部屋全体の解析ですが、局部的により細かくメッシュを入れて解析していきたい。

― 電力削減の目標値を教えてください

現時点での即効性を期待した対策では10%削減が限界ですが、これはまだ第一フェーズです。もう少し先に出てくる技術では空調電力の半減を目指しています。

ただ、技術者としての思いは、半減ではなく10分の1にしたい。まだ具体的なアイデアには至っていないのですが、今の常識である、空調機は上から吸って下から吐くものである、サーバは横置きするものである、というところから見直してやっていきたいです。

ここまで構造計画研究所とFloVENTには助けられてきました。われわれはシミュレーションをツールとして扱っていますが、ソルバー自体や解析の技術的な側面については構造計画研究所が圧倒的に詳しく、今後もウィンウィンの関係で相談させていただきたいと思っています。

実験室にて

実験室にて


取材日:2013年3月
______________________________________________________________________________________________
NTT環境エネルギー研究所について
設立 2002年7月
所在地 東京都武蔵野市
ホームページ http://www.ntt.co.jp/inlab/kankyo/別ウインドウが開きます

______________________________________________________________________________________________


>> ダイジェスト版ダウンロード  [825 KB]


この事例に関するお問い合わせ

SBD営業部

TEL:03-5342-1051

E-Mail: sbd@kke.co.jp

http://www.sbd.jp/product/netsu/flovent.shtml別ウインドウが開きます

大阪支社 TEL:06-6226-1231

中部営業所 TEL:052-222-8461


この事例で使われているソリューション
FloVENT