Story. 05



既に始まっているIoTによるライフスタイルの変革

あらゆるものがインターネットにつながることで私達の生活はより快適で便利になる――IoT(Internet of Things)の浸透によって、社会・経済・産業の在り方が大きく変わろうとしています。

実際、アメリカでは一足先にIoTが人々の生活に浸透し始めています。2017年までに累計販売数が3000万台を超えると予想される人工知能搭載スピーカー「Amazon Echo」は、話しかけるだけで好きな音楽を再生することはもちろん、照明のオンオフやタクシーの配車、インターネット通販など、様々な操作を「音声だけで」行うことができます。その他にも、温度調節機能と火災報知器を組み合わせた製品「Nest」や、家中のあらゆる家電をインターネットにつなぐGeneral Electric(GE)社のWiFi Connectなど、さまざまな製品が次々と市場に出され、家庭に入り始めているのです。

「アメリカの人々はIoTによって自分のライフスタイル、行動が大きく変わりつつあるのを実感しています。様々な"モノ"がインターネットにつながる流れは、今後、より一層加速していくでしょうし、日本も例外ではありません」

そう話すのは、KKEの鄭 愚耕(チョン・ウギョン)。韓国出身で日本の大学に留学後、フラットな社風に魅力を感じ入社。以前の部署では、スマートホームや高齢者向け見守りに関する新規ビジネス創出に携わっていました。現在彼が所属する「すまいIoT推進部」は、建築設計、自然環境、防災、社会コミュニティといったこれまでKKEが培ってきた領域の知見とIoTを融合し、「安全・安心な空間づくり」を実現するために立ち上げられました。「住まう」という活動や「住まい」という空間で、KKEのソリューションを通して利便性や安全性を高めることがミッションです。同部門でマーケティングリーダーを務める鄭は、そのための重要な一歩目が「鍵」だと熱っぽく語ります。


「鍵」から始まる安全・安心な空間

「日本市場での展開を進めている『RemoteLock(リモートロック)』は、私達が目指す安全・安心な空間づくりの足掛かりとなる重要な製品だと考えています。この製品は解錠の暗証番号をクラウドで管理できる、いわゆるスマートロックで、活用のメリットとしては、人の出入りが多い部屋で物理的な鍵の管理・受け渡しが不要となったり、鍵の複製リスクをなくせる、といった点があげられます。誰がいつ部屋に入るか、暗証番号ごとに解錠できる時間帯を遠隔管理できるので、セキュリティ環境の向上に貢献できます。誰もが使っている鍵だからこそ、活用の可能性は大きい。お客様の声を聞いて、RemoteLockの可能性をどんどん引き出したいと考えています」(鄭)


もともとRemoteLockはアメリカのスタートアップ企業が開発した製品で、日本市場での可能性を感じたKKEが2016年から技適の取得やプレマーケティング等の事前準備に取り組み、2017年1月、販売をスタートしました。現在、鄭の主要ミッションは日本市場における製品のマーケティング活動。戦略の立案から実行、パートナー企業やWebマーケティングによる様々なお客様への対応まで、多岐にわたる業務をこなしています。外国人旅行者の増加による宿泊需要の増加を受け、販売開始直後よりホテル業界や民泊運営者から反響が寄せられ、大きな手ごたえを感じていると言います。

「お客様とのコミュケーションを通じて、この製品の持つ様々な可能性に気づかされ驚いています。鍵を持ち歩かなくていい、遠隔で入退室管理できる、といった利便性はこの製品の一面でしかなく、ユーザーの視点に立つと様々な価値が見えてきます。例えば、外部からの不審者の侵入はもとより、悪意を持った内部関係者の入退室などは、セキュリティ環境の向上によって防げるケースも多く、事件やトラブルの未然防止に大いに貢献できるはずです」(鄭)

「RemoteLockが普及することで、より安全・安心な社会を作ることができる」 鄭はそう信じており、この仕事に取り組めることに喜びを感じると言います。


IoTで集めたデータを分析し、次のサービスを生む

KKEがRemoteLockの展開の先に見据えているのは、RemoteLockをはじめとするIoT関連デバイスのさらなる活用を目的とした、クラウドベースのプラットフォーム構築です。将来的にはこのプラットフォームに様々なデバイスをつなげ、多様なユーザーのニーズに応えられるサービスの提供を目指します。

「KKEが提供しているIoT関連のデバイスには、訪問者の人数や行動を把握できるセンサーカメラ『ピープルカウンター』や、要介護者の離床やバイタルサインを感知できる『EVER Relief』などがあります。これらを組み合わせることで、民泊の場面ではRemoteLockで施錠を遠隔管理し、室内に想定以上の人が滞在していないかを『ピープルカウンター』で確認したり、介護施設では人の出入りを管理しつつ『EVER Relief』で入居者の状態を把握して徘徊を防止する、といったサービスを提供できます。これはほんの一例で、デバイスを組み合わせることで、もっと多様なサービスを提供できるでしょう」(鄭)


本当に価値のある製品・技術を生み出すために

IoTに大きな可能性が秘められていることは間違いありませんが、「とにかくIoTにモノをつなげば便利になる」という一部の風潮に対して、それほど単純ではないと鄭は釘を刺します。

「目指すべき姿、ビジョンのないまま闇雲にデバイスをつなげても、利用者が幸せになるとは限りません。あるべき姿をデザインし、IoTに何を期待するのか、AIに何をどこまで任せるのかを判断し、サービスを洗練させていくのが設計者である人間の責務といえるでしょう。IoTの強みは、デバイスから収集した膨大な情報を集め、分析することでサービスの質や精度を上げ、新たな価値を生み出せるところです。KKEはビッグデータ解析、データマイニングを手掛けていて、データを集めてどう使うかの知見はある。データ分析やお客様とのコミュニケーションを通じて、社会にとって本当に価値のある製品・技術を生み出したいですね」(鄭)

増え続けるデバイスと、そこから収集されるデータをもとに、IoTは社会に何を還元できるのか。さらなる「安全・安心な空間」を目指して鄭の取り組みは続きます。